ミソノピアの風に漂いながら 6

「遊歩道ことはじめ」 番外編/雀のいた日

巣箱先のエッセイで四十雀が巣作りをはじめたことに触れたが、おどろいたのは鳥たちが巣箱に出入りするための穴の小ささである。いくら小鳥といえどもこのように小さな、3cmあるかないかと思われる穴に入れるのかと心配したが、それよりも胴回りの大きい四十雀は簡単に出入りしている。つまり羽毛が胴回りを大きく見せていた。なによりも、この穴の小ささが天敵の進入を妨げていることになり、まさに「神の設計」なのだ。

四十雀には忘れられない想い出がある。

スズメのヒナ私がまだ小学生の低学年の頃の話だ。ある日、友達の家の屋根に登って遊んでいたとき、何げなく覗き込んだ屋根瓦の下に、雀の巣がかけてあり数匹の雛がいた。
私はそのなかの一羽の雛を家に持ち帰った。
お金に余裕の無い暮らしにあった私は、親に内緒で便所の横の物置にこっそり隠し、ご飯の米粒を少しずつ与えていた。
すると雛の啼き声に気づいた母が雀を見つけて部屋に入れてくれた。
やがて雀はすくすくと育ち、鳥特有の刷り込みで私にとても懐いて最高の友達になってくれた。

電線のスズメある日、学校の帰りで家の近くに来たとき、「チュン!と大きな啼き声が頭上でした。見ると電線に止まっていた一羽の雀が啼いていたのだ。それはそれでさほど珍しことではないことなので私はそのまま帰宅した。
すると母はおろおろした様子で、来客に雀の馴れた様子を自慢したく、鳥かごから出して遊ばしているうちに、窓の外に飛び出してしまったという。

さきほどの電線の雀は私を見つけて啼いたのだ。
私は窓の側に座り、「チュン、チュン」と空に向かって呼びかけ続けたが、暗くなっても雀は戻ってくることはなかった。人生ではじめての別れでもあった。
落胆の激しい私を見かねた父は、私に四十雀の雛を買ってきたが、私は興味を示さなかった。まだ野鳥の飼育が禁止されていない時代のこと、父はその後も四十雀を愛で、幾羽も飼い続けた。

先日、いまでは遠くになった故郷に帰った。
実家の近くで足を止め、あのときの電線を見上げ雀の啼き声を幻聴(きき)ながら、あの日の父と母の歳を遙かに越えた老人になってしまった私は、少年の日に還っていた。

いちご